小学校4年生の息子が、夏休みの自由工作で、「動くゴンドラリフトを作りたい!」と言い出したので、一緒に考えてみました。一番難しいのは、乗り場では低速で動いているゴンドラを高速で動くワイヤーに乗せる部分だと思います。いろいろ考えましたが、小学生の工作レベルでは難しいと思われたので、速度が一定のペアリフトを作ることになりました。
ペアリフトには、下記の部品が必要となるので、それぞれの材料を息子と考えてみました。
駆動装置となるモーターを何にするかを決めるために、息子にギア比と回転数の関係を説明した後、タミヤのモーターのギア比と回転数を調べてみました。ペアリフトは、1分間に10回転ぐらいのゆっくりした速度で動かしたいので、回転数が9rpmで動かせるタミヤのミニモーター低速ギアボックスを使うことにしました。
緊張装置は、ワイヤーのたるみをとるための重要な装置で、油圧シリンダーの代わりに引きばねを利用してモーター軸を引っ張ることにしました。昔のペアリフトは、油圧シリンダーではなく、重りをぶら下げた緊張装置だったので、重りによる緊張装置にしても良かったかもしれません。
ワイヤーはタコ糸を利用し、タコ糸を導くためのプーリーは、安価で手に入る戸車を流用することにしました。
残りの部品は、小学生でも加工できるように、ベニア板とアルミ製の針金を使うことにしました。
ベニア板はノコギリで切って木工用ボンドで貼り合わせることで、いろいろな形のものを作れます。
ですから、調整用の細かな部品や、スライド機構なども作ることができます。
アルミ製の針金は簡単に曲がるので、手やペンチを使って自由な形に加工できます。
どちらも加工がしやすく、安価に入手できる材料です。
材料費は、全部で3,000円程度でした。
部品 | 材料 |
---|---|
リフトを動かす大きなプーリー | ストロー、厚紙 |
大きなプーリーを動かすモーター | タミヤのミニモーター低速ギアボックス |
リフトを支える支柱 | 直径15mmと25mmの丸棒材 |
床や天井の板 | 3mm厚ベニア板 |
リフトをぶら下げるワイヤー | タコ糸 |
ワイヤーを導くためのプーリー | 戸車 |
ワイヤーのたるみをとる緊張装置 | 引きバネ |
人が乗るための搬器 | アルミ製針金、厚紙 |
ペアリフトの製作には、ドライバー、かなづち、ノコギリなど、いろいろな工具を使いますが、少し変わった工具などを紹介します。
ストローや厚紙を接着するために使ったのが、グルーガンです。
グルーガンは、樹脂製のステッィクを熱で溶かして、再度固めることで、何でも接着することができる便利な工具です。
ベニア板を切るためにはノコギリを使いますが、細かく切るときに便利な工具が万力です。万力でベニア板を挟むと固定できるので、細かい部品を製作することができます。
針金を加工するときにはペンチを使います。針金で細かな加工をする場合には、ラジオペンチと呼ばれる先の細い工具を使うと便利です。
パーツは、スプレー式のペンキで塗装しました。紙の上に部品を並べて塗装を行おうとしたのですが、風で思ったように塗装できなかったので、段ボール箱で、風防用の囲いを作成したところ、風の影響も受けずに塗装することができました。
まず最初に、リフトを動かすための大きなプーリーを作ることにしました。ストローを45mmの長さで16本切り、中心から放射状に8本並べてグルーガンで固定します。平らな板の上に置き、ゆがみが出ないようにして固めます。
グルーガンで固定しているため仕上がりは綺麗ではありませんが、シルバーに塗装すると、金属の質感が出て、なかなか見栄えが良くなりました。
組み立ててみると、プーリーが傾いてしまうので、天井の下にベニア板を貼って、水平になるように調整しました。
リフト降り場の大きなプーリーはブレが大きくてタコ糸が外れやすかったので、ブレ止めにベニア板でプーリーを挟む構造に変更しました。
大きなプーリー円筒型の部分は厚紙で作ったのですが、タコ糸が滑ることがあったので、グルーカンで表面を凸凹にしました。
次に、モータを組み立てます。タミヤのミニモーター低速ギアボックスは、歯車がバラバラに入っているので、説明書を見ながら組み立てていきます。
モータには、逆転スイッチ付きの電池ボックスを接続し、自動運転可能にしました。
リフトをバックできると、動作テストで、繰り返し動かせるので便利です。
モーターと電池ボックスの間に木ねじが付いているのは、ここに手回し発電機を接続するためです。
手回し発電機を使うと、リフトの速度を変えて動かすことができます。
緊張装置は、モータを乗せたベニア板とリフト乗り場の天井のベニア板を引きばねで繋ぎます。この状態でプーリーにタコ糸を巻き付けて、バネを引っ張ってみたところ、モータが板ごと立ち上がってしまいました。そこで、モータの台となるベニア板の上に、押さえとなるベニア板を取り付けて、バネの伸縮方向にだけ移動するようにして、モータが立ち上がらないようにしました。
最初は、緊張装置のバネを天井に固定していたため、テンションの強さを調整できませんでした。そこで、バネの先に針金を付けてワイヤーストッパーで固定するように改良しました。
リフトを支える支柱には、2種類あります。息子はスキーに行くと、いつもリフトの構造を見ているので、支柱の説明をする必要はありませんでした。2種類の支柱の違いは、ワイヤーが山型に曲がるときは、ワイヤーはプーリーの上を通り、ワイヤーが谷型に曲がるときは、ワイヤーはプーリーの下を通ります。そのため、支柱に取り付ける戸車は上下対象として、どちらでも使えるようにする必要があります。今回は、リフト乗り場とリフト降り場しかありませんので、それぞれに1本ずつの支柱があるだけです。息子は、中間支柱を多数作成し、長い距離でも動かしたいという野望を持っているようです。
プーリーは、戸車の端をペンチで90度曲げて、戸車固定用の穴に針金を通して固定しています。ペアリフトは、可動部分が多いので、分解して部品交換が可能なようになっています。
リフト乗り場やリフト降り場の天井や床は、3mm厚のベニア板を切って作成し、柱は、直径15mmと25mmの棒材を切って作成しました。塗装する前に、部品が足りているかを確認するために、並べてみました。
部品が揃ったら、塗装を行い、塗装が終わったら、各部品を組み立てていきます。部品を作り替えることはあると思いますので、主な部品の組み立てには、釘ではなく木ねじを使っています。
試運転をしてみて気が付いたのは、大きなプーリーが傾いたり、上下にブレるためタコ糸が外れるというトラブルが頻発するということでした。そこで、大きなプーリーを2枚のベニア板ではさむ構造にしました。また、傾いている箇所にもベニア板を取り付け、水平が保てるようにしました。細かな調整は、すべてベニア板を貼り付けることで行いました。
最後まで、良く分からなかったのは、糸のテンションの強さです。テンションが強い方が良いと思っていましたが、テンションが強すぎると外れやすいようです。
人が乗るための搬器は、直径2mmのアルミ製の針金を使いました。座面と背板は、厚紙を切って作成します。搬器が傾かないように、搬器をぶら下げるための棒と搬器の間は、テープを巻き直径1mmのアルミ製の針金で巻き付けて固定しました。アルミ製の針金は、小学生でも加工しやすいのが利点ですが、何回も曲げていくうちに、波打ったようになってくるのと、表面の塗装がすぐ剥がれてしまうので、仕上げはいまいちですが、小学生の工作としては、上出来だと思います。
搬器は、針金をペンチで押さえることで、タコ糸に固定しています。速度が変わるゴンドラリフトをあきらめたのは、この部分の加工が難しかったからです。
実際に動かしてみると、形が悪い搬器や、バランスの悪い搬器は、いろいろな個所で引っかかってしまいます。そこで、本物のリフトと同じように背板に番号を付けて、調子が悪い搬器がすぐ分かるようにしました。
ペアリフトの完成です。いろいろな角度から写真を撮ってみました。
約2分間の動画をダウンロードして、見ることもできます。
小学校の夏休みの自由工作として製作しましたが、このペアリフトが、石川県の発明くふう展に展示され、大野弁吉賞を頂きました。大野弁吉氏は、江戸時代の技術者で、からくり人形や写真器などを製作した人です。ベニア板で加工している点が、からくりみたいで評価されたのでしょうか。
大野弁吉賞のトロフィーは、写真の中央下の透明なレーザー彫刻のあるトロフィーです。